文学の森

書庫 書き溜めた短編

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 克雄は、興味深いものを見に行こう、と武司を誘った。
 初めは、パチンコ店の立体駐車場。
「知ってる?パチンコに嵌っている教師が多いこと?ほらっ、見て、あの駐車場でやったんだ。首吊り自殺した英語教師は、自分がした糞をパチンコ店のトイレに塗りたくり、その夜、死んだんだ。しかも、そのトイレの個室は以前、灯油を被り焼身自殺した人が使ったらしいよ。店の奴隷と化していたんだね。様々な職業があるのに、どうして、パチンコ店に勤務するのだろうね?不思議じゃない?」
「皆、克雄君みたいに、頭が良いわけじゃないもん。さっきの男の人も、頑張ったけど、市に頼るしかなかったのかもしれないし・・・・」
 克雄は、武司の言葉に耳も貸さず、次の場所に案内した。そこは、二階建てのアパートが四棟並んでいる。
「ほらっ、見て」
 そう言うと、ひとつのアパートの玄関を指差した。幼い男の子が立っていた。
「立たされているんだよ。あの子の母親はね、女の子だけが欲しかったんだ。だから、二番目の子供が男の子だったから、養育を拒絶したんだ。馬鹿女、だね」
 そして、「おーい!研くーん!」と少年の名を呼んだ。少年は嬉しそうに手を振った。
「馬鹿だな~、お母さんの言う通りにしなくてもいいっていつも言ってるのに~、身体が勝手に反応しちゃうんだね。夜はどうしているの?また、車の中?それとも、下駄箱の横にゴザを敷いて寝てるの?」
 研と呼ばれた少年は、恥ずかしそうに、「車」と答えた。そして、克雄に懐いているのか、「何か買って」と訴えた。
「じゃあ、アイスとオニギリと野菜ジュースを買って来て、武司君」
 武司は驚いて、「ぼ、僕が?」と言った。
「そうだよ、僕はその間、研君がどんな酷い虐待を受けたか訊かなければならないから」
 そう言って、お金を手渡した。克雄はうんうん、と頷きながら研の話に夢中になっていた。夏休みの自由研究と言いながらも、随分と前から、克雄は権力が人を変えることについて興味を抱いているのだな、と武司は思った。腰をおろし、子供の目線で話を聞く克雄の背にそう感じざるを得なかった。

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